vol.3　サプライズ婚

ショートストーリー『今日は結婚式』
ウェディングプランナーの中道諒です。
これまで僕がプロデュースさせていただいた結婚式。
あったかい結婚式、楽しい結婚式、そしてちょっとほろ苦い結婚式・・・、色々な結婚式を僕目線のショートストーリーでお届けします。

「中道さん！結婚式をプレゼントしたいんです！」

以前に僕がプロデュースさせていただいたお客様からそんな依頼があったのは、ある夏の日の午後だった。

その2人は結婚して10年。
3人の男の子がいる。長男は10歳。
若かった2人は生活を優先し結婚式は挙げなかった。

今年はそんな2人の10年という節目。
結婚式をプレゼントしたい！とお母様や友人たちが発起人となりサプライズ結婚式の準備がはじまった。

お母様の想い、そして友人たちの想い・・・
愛に溢れたその想いは、とてもあたたかい。

そして、サプライズ結婚式当日。

お母様からフォトウェディングのプレゼントという口実で、2人は当社指定のフォトスタジオにいた。

彼女はアイボリーのウェディングドレス、
彼はシルバーのタキシード。
そして3人の息子たちは黒のタキシードを着た。

はにかむ彼女のドレス姿に笑顔を見せる彼。
とても穏やかで幸せに満ちた空気が流れていた。

2人がフォトスタジオで撮影をしている間、
フレンチレストランではパーティーの準備が進む。

レストランから『準備完了！』のメールが入り、
僕は「今からロケーション撮影に行きますね」と言って、2人と息子たちを連れだす。

『今、フォトスタジオ出ました！』
僕からのメールに、お揃いの服に身を包んだ友人たちがレストランで身を乗り出し2人を待ち構える。

3分後、
2人を乗せた車はレストランに到着。
僕は2人をレストランの入り口へ誘導する。

そして、扉を開けた。

「おめでとー！」

2人の目の前には、
涙でくしゃくしゃになったたくさんの顔があった。

あったかい風が吹き抜けた。

fin